チリで発掘されたクジラの全身化石標本、現生クジラの全身骨格標本などを展示する「神奈川県立生命の星・地球博物館」。小田原城が有名な小田原駅から箱根登山鉄道を乗り継いで行ってきました!
東京駅からJR東海道線で小田原、そこから箱根登山鉄道を乗り継いで約2時間。最寄りの「入生田(いりうだ)駅」の案内板を頼りに国道138号へ出てすぐの歩道橋を登り、道沿いに進むとお目当ての博物館に到着。「生命の星・地球博物館」という名前通り、地球誕生の歴史から、鉱物、生物を時系列で展示されていて非常にストーリー性が高い博物館。特に鉱物は珍しいものがかなり展示されているので、これだけでも見る価値があり。お目当てのクジラの化石標本「インカクジラ」は、1Fの常設展示で鉱物エリア、植物エリアを抜けた動物エリアに。
「インカクジラ 学名Incakujira anillodefuego(インカクジラ・アニリョデフエゴ)」は、750~730万年前の新生代新第三紀中新世に生きていたヒゲクジラの仲間で、分類的にはナガスクジラの仲間だそう。このクジラは、1980年代にペルー共和国のナスカから南に約80kmのアグアダ・デ・ロマスで発掘され、パラタイプ(学名の基準となるホロタイプの予備的な標本)に指定されており、ホロタイプに指定された蒲郡市生命の海科学館の標本が体長8.25 mなのに対し、体長7.15 mとやや小型で鼻骨や前頭部、後頭部などに特徴があるそう。また、属学名のIncakujiraは、ペルーを統治したインカ帝国の名と、日本語のクジラを組み合わせたもので、種小名のanillodefuegoはペルーと日本を結ぶ環太平洋火山帯を意味するスペイン語にちなんだものだそう。
この化石を分析した研究者によると、ペルーの砂漠地帯にはヒゲクジラ類やアザラシ類の化石が数多く見つかって、現在ペルーでは化石の輸出は禁止されているため非常に貴重な標本とのこと。
展示標本を見ると頭骨、頸椎の形態がよくわかり、胸椎についた大きな肋骨の捻じれ感が発掘した当時の生々しさが残っていて、どんな姿で古代の海を泳いでいたのか非常に気になります。前段の研究者の方から、「シロナガスクジラやザトウクジラに似ている形質もあり、顎の関節の可動域が現生種よりも狭く、捕食は飲み込み型だった可能性がある」と面白い話を聞かせて頂きました。
そしてこの展示の近くにはサプライズが!表示看板を見上げると、なんとヨウスコウカワイルカの模型が(笑)。つるんとした質感にまるまると太っていて、ちょっと妖怪のよう。この博物館にはヒゲクジラからハクジラまで、かなり多くの現生種のクジラの骨格標本が展示されています。
特に珍しい種類はイッカクの全身骨格標本。イッカクの角はよく展示されているのは見かけますが、全身骨格標本は初めてみました。残念なのは、高い天井から吊り下げ展示のため、近くでその姿を観察することはできません。じっくり観察すると本当に首を痛めるので、ほどほどに(笑)。
その他にもコククジラ、マッコウクジラ、オキゴンドウ、オウギハクジラが展示されています。骨盤痕跡もついていて、とてもキレイな標本。
2階の展示室にエスカレーターで上がると、クジラの頭骨、ザトウクジラやナガスクジラの脊椎骨の一部が展示。別の展示コーナーには珍しいイシイルカの頭骨とイッカクの角、オウギハクジラの下顎骨が、肉食から草食の食べ方の違いによる動物の顎の展示パネルに飾ってありました。なんとモササウルスの歯まで!
また、天井から吊るされた現生クジラ全身骨格標本の案内板は、2階の1階を見下ろせる場所の手すり下にひっそりと置かれているのでお見逃しなく。クジラの骨格標本以外にも、様々な仕掛けの展示があり見どころ満載なこの博物館、箱根の温泉にいくなら是非立ち寄ってほしい場所。
博物館のお土産コーナーでシロナガスクジラとザトウクジラの小さなソフビが売っていたので、物欲に勝てず思わず買ってしまった…。
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神奈川県立生命の星・地球博物館
営業時間:9時~16時
休館日:月曜日(休日の場合その翌日)・年末年始
入場料:¥520
全身骨格標本展示
インカクジラ(アニリョデフエゴ)(化石)
コククジラ
マッコウクジラ
オキゴンドウ
オウギハクジラ
イッカク
頭骨展示
カマイルカの一種
セミイルカ
オキゴンドウ(レプリカ)
マゴンドウ(レプリカ)
イシイルカ
不明種
その他展示
ナガスクジラの脊椎(レプリカ)
ザトウクジラの脊椎
イッカクの角
オウギハクジラの下顎骨
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行き方
東京駅 → 小田原駅 → 箱根登山鉄道・入生田(いりうだ)駅 → 徒歩3分 → 神奈川県立生命の星・地球博物館
時間:2時間
費用:1740円
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訪問時期 19年1月
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博物館向かいの国道沿いにある酒屋さんで、飲んでみたかった高知の日本酒「酔鯨」を発見。ソフビに続き買ってしまいました(笑)。キャップとラベルがオシャレなクジラデザインで、もったいなくて当分飲めそうにありません…